たゆたえども沈まず

そうだ。私はあのことをまだ久喜に謝っていない。

「八つ当たり繋がりで思い出したんだけど……あの、海で久喜に八つ当たりしたの、ごめんね」

「海?」

「覚えてないなら良いよ。そのまま忘れてて」

「覚えてる」

歩き出す。私の鞄は久喜に持たれたまま。

「あ、間違えた」

「うん?」

「温のが八つ当たりで、俺のは嫉妬だ」

ね、と同意を求められる。私は赤くなりそうだったので俯いた。

もしかして、今日は吉日だろうか。




鯖の味噌煮を食べた後、久喜と皿洗いをした。

お母さんはリビングで洗濯物を畳んでいる。



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