たゆたえども沈まず
自分のスクールバッグを死守して、帰路につく。斜め前を歩く久喜の後ろ姿を盗み見しながら歩く。
「学校楽しい?」
いつも会うと聞かれる質問。
いつも聞かれると返す答え。
「まずまず」
「いつもそれ。ま、いじめられてねーんならそれでいっか」
「それより、久喜は?」
この人勘当されているんだった。
肩越しにこちらを見て、前を向く。考えているのか少しだけ黙ってから声を出した。
「まずまず?」
「…お金があれば良いってもんじゃないでしょう?」
「んー」
と、また考え出すから黙る。
歩道の横を大型車が通っていく。
この道をこうして何度か久喜と歩くから、ここを歩くと久喜のことを思い出す。