たゆたえども沈まず
どうして、そんなこと。
思って、ふと思い出す。
『好き過ぎたんだよ』
私が言ったのだった。
「使ってないわよ、返せば良いんでしょう、返せば!」
「……そうして貰えると、ありがたいです」
「だいたい、あんた何様なわけ?」
それが分かったのは、私が久喜を好きだから。好きだから、好き過ぎたから、譲れない。
私も似てるんじゃないか。
世に言う可愛らしい女性はきっとそういう場面では身を引くのが普通だろう。昔から私はそれに賛成とは言えない。
これは母から継いだ血なのかもしれないし、私の性格なのかもしれない。