たゆたえども沈まず

不思議に思ったけれど、教室から遠ざかる部長を見て言うのは辞めた。

「じゃあ、あたしは放送室に戻る」

「部長、ありがとうございました」

「何が? ただ忘れ物を取りにきただけだって」

肩を竦めて背を向けて行ってしまう。部長が教室を嫌いな理由を私は知らない。

部長が、人の声に敏感なのは知っている。

「プリンス先輩も」

「部長の言った通り、俺は何もしてないよ」

「来てくれたことが心強いです」

頭を下げると、「部長がさ、こっちの教室まで来て」

廊下の窓に寄りかかる。私はその続きを待った。


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