たゆたえども沈まず
「『私の教室まで一緒に来てほしい』って有無を言わさずに連れていかれた」
「きっと、部長も先輩がいると強くなれるんじゃないですか?」
「だと良いけど」
同じように肩を竦めて、プリンス先輩は自分の教室へ戻って行った。
私も教室に戻って、携帯を見た。
まだチャイムが鳴るまで、あと三分。
間に合うかな、と思いながら廊下に出て、電話帳を開いた。
艶野久喜の欄をタップして、電話をかける。
1コールで出た。
『もしもし、温?』
久喜の声が聞こえる。電話をかけるのは久喜の誕生日以来だ。
「うん」
『どうした?』
「久喜、好きだよ」
窓の外は、青い空が広がっていた。