たゆたえども沈まず
そこで思い出す。久喜は天性の女たらしということを。
「私のことを好き……?」
「義理の妹。佐山先輩の弟と懇ろな」
「あの妹さん! この前話しかけられた」
「え、もう会ってんの。あいつ怖い……」
大袈裟に震える久喜はこちらを見る。
女心と秋の空、とか男心と秋の空、というけれど。
秋空は高い方が綺麗だ。
実和ちゃんというのか、今度ちゃんと会って話してみたいなあ。
「あれ、どうして妹さんが私のこと知ってるの?」
「俺と一緒にいるのを見たらしくて、ずっと前にお前のことを聞いてきたことがある」