たゆたえども沈まず
いや、私を口説く気なんてないのかもしれないけれど。
良いか、と思う。私だって久喜をいつ好きになったのか、とか、どこがどういう風に好きなのかと聞かれたら困る。
そういうピンポイントで好きなわけじゃない。
ここにいること、が好きだ。
「うん、ありがとう」
「それはこっちの台詞」
「どうして?」
「温はいつも傍にいてくれたから」
その言葉を聞いて、間違っていなかったな、と思う。
私は間違ってはいなかった。
久喜に抱き着くと、「俺悲しくないのに、どうして泣いてんの」と笑われた。