たゆたえども沈まず
模試一位というものを初めて見た。
「すご、クッキーまた一位じゃん」
「この前の中間でも一位だったみたいよ」
掲示板の前に群がる生徒が話す声を聞いて、小さく息を吐いた。
昔から頭の良い人。
「顔暗くね? 誰かになんか言われた?」
「久喜の頭の良さを羨んでた。どうして遊んでるのにそんなに頭良いの?」
「なんだそれ」
苦笑する久喜は廊下の壁にもたれかかって、貼り替えられていない天井を見上げる。カッターシャツの白が眩しい。
どうしたって、私はこの人種にはなれないんだと分かっている。成りたいとも思わないけれど、前提として成れないんだと知っている。
「久喜?」
「はーい」