たゆたえども沈まず
言葉に出来るのに声にならない。
そんなの、本人は愚か他人を目前にしてでさえ言えない。
「冗談キツいです」
私は劣ってる。
先輩が少し困った顔をした。ローファーに履き替えのと同じくらいに先輩も革靴を履いていた。
「ごめんね」
別に先輩が謝ることではない。
頭で分かっていても、それに返す言葉を見つけることが出来なかった。
「弟くん、久喜の妹ちゃんと仲良くしてますか?」
「してるしてる。毎日見るのが痛いくらい」
「ブラコンも大変ですね」
「え、俺ブラコンじゃないんだけど!?」
からかっただけです、と言ったけれど半分本気だ。
久喜の妹と知って、弟に付き合うの止めろなんて言う兄をブラコンと言わずに何と呼ぶ。