たゆたえども沈まず
心の声はその奥に潜めておく。
「じゃあ俺は本屋寄っていくから」
「はい、また明日」
分かれ道で別れる。プリンス先輩は颯爽とこちらに背を向けて行ってしまった。
紫陽花の前を通ると久喜のことを思い返す。
どうして私が久喜のような男とこんな関係になったかというと、原点は小学校の頃まで戻る。
小学四年生まで戻る。
踏切の閉まる音。
驚いて足を止めた。危ない、もうちょっとで挟まってしまう所だった。
嫌な意味でドクンドクンと煩くなる心臓を押さえて大きく深呼吸をした。
「のーんちゃん」
バッと振り返るとへらと笑う久喜が居た。
本当に、心臓に悪い。
今日は厄日か何かかな。