たゆたえども沈まず
何? って目で聞いてくる。
「…私、勉強するだけだよ?」
「流石にここで歌ってなんて言うほど常識なくないけど」
「久喜、退屈でしょう」
「のんちゃんをじっと観察してるから、全然退屈じゃない」
その返しに何て言って良いのか分からなくて黙る。まあ、久喜ならつまらなくなったらどこかへ行ってしまうだろう。そういう男だ。
教科書を広げると、鞄から使ってない問題集を勝手に抜き出す久喜。それを読み込み始めるのを見て、高校辞めなきゃ良かったのに、と思ってしまう。
勿体ない。能力も外見も恵まれてるのに、自分から道を逸れようなんて。
試験の教科に集中して、気付くと日が暮れていた。今日は早めに眠ってちゃんと起きようと思っていたから、やろうと決めていた所まで終わってホッとした。