たゆたえども沈まず

隣を見ると、久喜が机に突っ伏して眠っていた。

「久喜、出るよ」

「んー……うん」

参考書を片づけて、久喜を起こす。起きたその頬に参考書の痕がついていて、少し笑った。

「痕ついてるよ」

「本当だ、ちょっと凹んでる」

綺麗な顔にペタペタと触れる指。ちょっとばかり久喜に痕を残した参考書を羨んで、鞄にしまう。
私達は図書館を出て、なかなか暗くならない道を歩く。

「試験終わったら夏休みか、良いなー」

「一年中休みの久喜に言われてもね」

「人を暇人扱いしないでくれます?」

確かに暇では無さそう。だからといって義務感に追われているようでもない。
久喜は掴めない男だと口を揃えてみんな言う。


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