たゆたえども沈まず
暇人ではない。自由人なんだ。
久喜が羨ましい理由をまたひとつ見つけてしまう。
「温は夏休み、何すんの?」
「この前受けた模試の結果によりけりかなあ。お母さんが黙ってないと思うし」
「温母は相も変わらず厳しいな」
その言葉に苦笑いする。
ずっと一緒にいる私もそれは実感していた。
分かれ道。久喜は家に帰るのか、また繁華街へ行くのかは分からないけれど、そこで私と別れた。
「またね」
言葉を残して、去っていく。
またがいつ来るのかも分からない。でも、多分また会える。
久喜はそんな期待を持たせる男だ。