たゆたえども沈まず

言い当てられてどきりとする。

「そうですよね、先輩ブラコンだから」

「クラスでもそんなに雑な扱い受けたことない」

「部長がいるじゃないですか」

あ、そっか。納得したように頷く先輩。

同じクラスだったというのに、部長は先輩の本名よりもあだ名を先に覚えたくらいだ。

「夏期講習遅れちゃいますよ」

改札に入って、先輩の乗る線の電光掲示板を指さす。

「じゃあ、また新学期に」

手を挙げてもらったので、手を振り返す。

その後ろ姿を見ながら思う。

入ってくれなかったら、って。
それは久喜も同じか。



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