たゆたえども沈まず

プリンス先輩は部長をお姫様抱っこ…するわけではなく、三つの椅子を一斉に引いた。まるでマジシャンみたい。

彼は誰かを抱けるくらいの力すら無いように思う。私よりも白い気がするし細い気がする。

そして起きない部長も部長だ。

もしかして死んでいるのでは、と息を確認するとちゃんとしている。プリンス先輩がスイッチを押した。

校内にプリンス先輩の美声が響き渡る。同学年の蘭子によれば、容姿も合わさってかプリンス先輩は一部で王子と呼ばれているらしい。

そこからプリンス先輩をプリンスとか王子とか呼び始めた部長に乗じて、私も蘭子もプリンス先輩と呼んでいる。

のそのそと部長が起き出して、伸びをする。私は食べ終わったお弁当箱を片付けて、目が合ったので小さく会釈をしといた。



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