たゆたえども沈まず
図書館に本を借りに行こうとしたら、久喜がいた。
紫陽花は疾うに枯れて、剪定されている。
神出鬼没だ。それとも蘭子がこっち側に来ないだけなのかな。
「あ、海行こ」
私の顔を見るなり、久喜はそう言った。
「え、何?」
「講座終わったなら夏休みじゃん」
「海って。何の用意も」
「水着なら今から買いに行けば良いよ」
そういう問題じゃない。
否定をする前に、久喜はどこかに電話をし始めた。
何を思っているのかは全く分からないけれど、久喜とどこかに行くというのは初めて。初めて繋がりで思い出したけれど、妹さんの名前を……。