たゆたえども沈まず
聞こうとしたら、久喜の電話が終わって道路の方をキョロキョロし始めた。
「どうしたの?」
「すぐ来るらしいから」
「……誰が?」
私の方を見てから、「あ」と声を出して私の向こうを見る。
ジャカジャカと大きな音楽。メジャーな曲しか知らないので、何の音楽なのかは分からないけれど、兎に角音が大きい。
田舎の海辺で走っていそうな……
「おーいクキ!」
……久喜のお友達らしい。
すぐ近くに停まった車の運転席から手がにゅっと出てきた。私達よりも年上に見える男の人。
驚いて一歩引いてしまった。
三列シートには男の人が多数乗っている。