たゆたえども沈まず
久喜もそれを見て眉を顰めた。
「なんでこんなにいんの?」
「クキが海に行くっつったらみんな行きたいってさ」
「乗れねえじゃん」
親指を後ろに向けた男の人。久喜がその方向を見たので、私も顔を向ける。
後ろにも一台、同じように三列シートの大きい車。運転席にいるのはベリーショートの女の人だった。
「クキ、こっち乗りなよ」
窓から顔を出す。久喜が私の方を振り向いて、少し肩を竦めた。
その意味は分からなくて笑って返してみる。
そして、手を掴まれた。