たゆたえども沈まず

プリンス先輩が曲をかけて、部長が口を開く。

「おはよう、もう昼?」

「もうって、何時からここに?」

「二限? から」

ぺちゃんこな鞄を引き寄せて、中からコッペパンが出てきた。

三年生っていう自覚あるんですか。私たちよりも必修は少ないけれど、こんな最初の方で休んでいたら後々大変になりそう。

プリンス先輩も苦笑している。

もぐもぐとコッペパンを口に入れながら、ぺちゃんこな鞄からハードカバーを取り出す。一応小説らしいけれど、私にはよく分からない海外の本を和訳したものらしい。

最近の愛読書。


「一年、入ってこないね」


曲は終盤に差し掛かっている。プリンス先輩が最近、忘れかけられていた話題を口にした。



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