たゆたえども沈まず

それでも手首を引っ張られる。男子の力で、普通に立たされてしまった。

「海の家に男物の水着なら売ってたんだけどなー」

「別にいいって」

「なんで?」

ちょっと声色が変わった。

驚いて久喜の顔を見ると、少し不機嫌。

「じゃあ砂浜の方行って、綺麗な貝殻探そう」

ぱっと表情が切り替わって、それにもまた驚いて頷く。手首を離さない久喜が歩きだして、私もその後ろを歩いた。

振り向くと、嬉しそうに手を振る先輩。

呼びかけられる声を完全に無視して、ちょっと遠くの海岸線まで行く。

貝殻は疎らにあって、どれも綺麗なような何処にでもあるような感じだった。


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