たゆたえども沈まず
私なんて何年も久喜と知り合っているのに知らないことの方が多い。
なんとなく久喜を見ていると目が合ってしまった。
すぐに逸らされて、傷つく。
傷つくと分かっていた恋だった。
しかも私が吹っ掛けた言葉。酷いことを言ったけれど、それで私が傷つくってどういうことだって思うけれど。
恋なんて理不尽なものなんだと思う。
「クキとのんちゃんて見てるの面白いよね」
「……楽しまないでください……」
私は至って本気である。
帰りも同じ車に乗せてもらったけれど、久喜は話しかけてこなかった。