たゆたえども沈まず

自分から話しかければ良い話なんだけれど、いらない意地が顔を出している。

「大丈夫、酔った?」

帰りの車内で起きているのは私と先輩と運転をしている人くらいだった。

死んだように眠っている人が多い中、窓の方を見ていると先輩が話しかけてくれる。

「いえ、大丈夫です」

「今日はとばっちりを食った日だったね」

先輩が肩を竦める。呆れた顔をしているけれど、それだけで絵になるから格好良い人ってお得だと思う。

「楽しかったこともあったので良かったです」

最初の方は手も繋げたし……あ、関節キスのことを忘れていた。

結局、家の方まで送ってもらったけれど、久喜とは一度も会話をせずにその日を終えた。



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