たゆたえども沈まず

ギャラリーも確認してこようと梯子に足をかけると、「あ」と先輩が声を出して上を指さした。

その通りに上を向くと、ジャージが見えた。スカートの中にジャージを穿くのは部長以外に知らない。

「おはよう。あれ、蘭子は?」

「多分ぎりぎりに来て、仕事せずに化学のワークやると思います」

「課題終わってないのかあ」

先輩が笑って言う。他人事っぽいなあ、他人事だけれど。

「王子は課題で困ったことなさそうだよね」

「課題ってのは出す三日前には終わってるもんだから」

嫌味か、と部長が眉を顰める。


< 74 / 163 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop