たゆたえども沈まず
去年の三年生がまだ居た頃、放送部の仕事に総動員する必要もなく、私はゆっくり登校していた。
「久喜?」
一階を歩いていると、そのすぐ外で久喜が一人で何かをしていた。
窓を開くと久喜がこちらを見上げる。
「はよ」
「おはよう、何やってるの?」
上履きで土いじり?
その姿を見て考える。天才は何をするか分からない面が多いと言うけれど。
「偽装工作」
「アリバイ作りにしては手を汚し過ぎじゃありません?」
「一世一代に関わる事件だからな」
パンパンと手の土を払う。