ことり公園。
*****


 3年前、俺がまだ、高校1年生だった時のことだ。


「誰か、行事委員やってくれる人。」


 寝癖のついた髪を掻きむしりながら、ジャージにサンダルと、ラフな格好をした担任が、気だるげにそう言った。


「誰もいない?」


 暫く経っても誰も手を挙げず、立候補者は居ないようだった。


 積極的に動けない、ただやりたくない、そんな理由が大半だろう。


 俺は後者の方で、強制という訳でもなかったこともあり、頬杖をついて、あくびをしていた。


 担任は伸びた顎髭を掻き、うーん、と唸り声をあげながら、出席簿を手に取る。


 その行動に、俺はどきりとした。


 この人は、確か、……


「今日の日付の出席番号で決めるからな。ちなみに拒否権はない。」


 やっぱり、この担任は、決め事でも問題を出す時も、この手を使う。


 そして、今日は4月17日、俺の出席番号は17番。


「出席番号17番は、……小鳥遊だな、はいよろしく。」

「……ハイ。」


 当たって欲しくない予想が当たり、俺は前髪を掻きあげ、がくんと項垂れた。


「で、女子は、16番、……鈴原だな。はいよろしく。」

「はい。」


 この時俺は、同じクラスの鈴原 ことりに、大した印象は抱いていなかった。


 寧ろ、この時はまだ、名前さえ覚えちゃいないほどだった。
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