ことり公園。
 結局我慢ならなくなって、俺はホッチキスを机に置いた。


 それに気がついた鈴原が、不思議そうに俺を眺める。


「……鈴原。」

「は、はい……。」


 俺が話しかけるといちいちビクビクするし、どう考えたって挙動不審だ。


「気が散る。」

「ご、ごめんなさい……。」


 冷たく言い放つと、鈴原の黒目がちな瞳が微かに潤んだ。


 それが、俺の中の何かに火をつけた。


 また作業を始めると、手を止めていた鈴原も同じように動かした。


 俺は目線は手元に向けたまま、少しからかってみようと、口を開いた。


「俺、ホモじゃないから。」

「え……。」


 間抜けた声とともに、鈴原の手から、束ねられた何枚かの紙が滑り落ちていったのがわかった。


 ……やっぱり、鶴田のやつ。


 俺はすぐにそれを拾い、にっこりと笑顔を浮かべながら、ぽかんとしている鈴原に手渡す。


「……ひどいね、鈴原。それを信じて俺に引いてたんでしょ。」

「あ、……えっと、その。」


 追い詰められた鈴原の目が、右へ左へとキョロキョロ泳ぐ。


 結局言い訳なんて浮かばなかったのか、鈴原は諦めたように少し俯いて、


「……ごめんなさい。」


 とつぶやいた。
< 24 / 90 >

この作品をシェア

pagetop