ことり公園。
「……それだけ?」

「……え。」


 わざとそう言うと、俺を見ていた鈴原の目がまた泳ぎ始めた。


 そして、真剣にうーん、と唸りながら考えるような素振りを見せていたが、結局諦め、眉をハの字に下げた。


「あ、あの、……どうしたら許してくれるの?」


 俺はもう、限界だった。


 ……こみ上げてきた笑いを、抑えることが。


 俯いているものの、肩を震わせる俺に鈴原は勘繰ったのか、目の前から鋭い視線を感じた。


「……笑ってる。」

「……ごめん、だってなんか、必死だったから。」


 尚もくすくすと笑っていると、鈴原はフグのように頬を膨らませた。


「小鳥遊くんって、……結構イヤな人。」

「……まあね。」


 やっと笑いが収まって、俺はまたまたしおりを纏めて、ホッチキスで綴じる。


 鈴原もそれを始めた所で、作業をしながら口を開いた。


「なんで、知ってたの?わたしが、……小鳥遊くんの変な話、聞いたって。」


 俺の頭にふと、あの体操服を取りに戻った放課後の事が過る。


 ……少し話を聞いてしまったのは、一応伏せておこう。


「……なんとなく、態度で。どうせ鶴田だろ?アイツには前にもやられたからね。」

「……そうなんだ。」


 鈴原がくす、と笑う。


「……鳥居くんと、すっごく仲良かったし、わたしもすっかり騙されちゃった。」


 鈴原の言葉に、中学の頃のアレはやっぱりそれも大きな理由のひとつだったのだろう、とたかひろのことを少し恨んだ。
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