ことり公園。
「えっ、す、好きなタイプ……。」


 いきなり話を振られた鈴原が、俯けていた顔を上げ、驚いたように大きな目を瞬いた。


 たかひろがそんな鈴原を、なんの期待を込めているのか、じっと見つめる。


「えっと……。」


 鈴原の形のいい唇が、小さく動いた。


「知的で、……静かな、人。」


 俺はたかひろの方を見ないでも、ショックに表情を歪めたのがわかった。


 鈴原の答えは、まさにたかひろとは正反対だった。




 放課後、俺は鈴原と肩を並べて、廊下を歩いていた。


 先程まで、行事委員の仕事で、キャンプ合宿のしおりを持って、日程細案の確認を行っていた。


 雨が降った場合のプログラムについても事細かく決められていたので、随分時間がかかってしまった。


 明日のホームルームの時間には、班編成や、バスの座席なども決めなくてはならない。


 わりと面倒な仕事を任されたな、とぼんやりと考えていると、


「小鳥遊くん。」

「ん?」


 不意に呼ばれて、鈴原の方に目を向けると、不安げな横顔が目に入った。


「わたし、鳥居くんに何か失礼なこと、言っちゃったかな。

 お昼休みから、……今日ずっと素っ気なくて。」


 鈴原のタイプを聞いてから、すっかりテンションを落としたたかひろの姿を思い浮かべる。


 あんなに分かり易く反応を示していたのに、自分のせいだと気がついていない鈴原に、俺は驚いた。


 ぽかんとしていると、鈴原が俺の顔を覗き込んだ。
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