ことり公園。
***


「な、言っただろ。」

「うん……。」


 それから1週間もすれば、たかひろはすっかり元気を取り戻していた。


 朝、また電車で一緒になった鈴原にそう、少し得意げな顔を見せると、鈴原はおかしそうに笑った。


「なんだかんだ言っても、……仲良しなんだね。」

「……まあ、いちおう……。」


 少し照れくさくて、鈴原から目を逸らして人差し指で鼻の下を掻くと、鈴原はなおもくすくすと笑っていた。


 俺たちはこんなふうに、朝一緒に電車で会話をして、登校することが多くなっていた。


「キャンプ合宿、……もうすぐ、だね。」


 するりと長い髪を耳にかけ、鈴原が話題を切り替えた。


「うん……。」

「同じ班だし、……なにかと、小鳥遊くんと関わること、多いかも。」

「それ、俺も思ってた。」


 鈴原はふふ、と微かに笑みを零したかと思うと、少し眉間にシワを寄せた。


 ……?


 鈴原が口を閉ざし、ガタン、ゴトン、沈黙の間、電車が揺れる音だけが2人の間を流れてゆく。


 俺は不思議に思いながら、鈴原を見つめていると、すぐにおかしなことに気が付いた。


 近くで、荒い、吐息が聞こえる。
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