ことり公園。
 電車が駅に到着すると、俺は鈴原の肩を離し、そこから降りる。


 鈴原を見れば、微かに潤んだ瞳が俺を見据えた。


「あの、……ありがとう。もう、平気。」


 その嘘は、人の気持ちを読み取るのがヘタクソな俺にでも、すぐにわかった。


 何も言わずに鈴原の手を取ると、少し驚いたように肩を揺らしたけれど、決して振り払われるようなことはなかった。


 隣を見れば、恥ずかしそうに俯く鈴原が目に入る。


「……」

「……」


 言葉でどうにかするのが苦手な俺には、こんな方法しか思い浮かばなかったけれど、こんなことをしてしまったことが本当は恥ずかしかった。


 鈴原の冷たかった手が、次第に熱くなってゆくのがわかった。


 胸の奥にほんのり残る、鈴原の温もりや、柔らかな感触。


 細い肩や、ほのかに香る、優しいシャンプーの香り。


 ……思えば、この時からだったのかもしれない。


 鈴原を、女として意識し始めてしまったのは。



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