ことり公園。
 じり、と自分でもよくわからない感情に支配された。


「……どうか、したの?」


 鈴原の表情やしぐさに、微かな焦りが感じられる。


 それはおそらく、さっきの告白現場が、見られてしまったかもしれない、といったものから来ているのだろう。


 俺はあえて無表情を作り、なんでもない態度をとった。


「……いや、たかひろのいびきがうるさくて寝れなくてさ。」


 俺の言葉に、鈴原の強ばっていた表情が少し和らいだ。


「そうなんだ……。それでそれ、やるの?」


 鈴原がそう指差したのは、俺の手に持っていた花火だった。


「うん、そ。……鈴原も、暇ならどう?」

「……少し、やってみたいかも。」


 鈴原が誘いに乗ったことに、俺は心の中でよし、とガッツポーズをした。


 とりあえず外に出ると、消えかかった儚い光を放つ外灯がぽつんと立っている側にふたりがけのベンチがあって、俺たちはそこに腰掛ける。


 鈴原に1本の線香花火を渡すと、少し嬉しそうに笑った。


「花火なんて、……久しぶり。」

「うん、俺も。」


 鈴原の持っている花火に着火マンで火を点けると、小さなオレンジの光が灯った。


 やがてそれは、パチパチとはじけ出す。


「綺麗……。」


 つぶやいた鈴原の横顔は、どこか思いつめるような表情で、俺も花火に火を点けて、目線はそこに向けたまま言った。


「……告白、されてたね。」
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