ことり公園。
 鈴原がふ、と驚いた顔を俺に向けるも、俺ははじける自分の花火を見つめる。


 鈴原が大きく動いたことにより、鈴原の持っていた花火の炎がはた、と地面に落っこち、オレンジの光はゆっくりと、そこに溶け込むように消えた。


「……聞いてたの?」


 思った以上に戸惑っているような声に、俺は言葉を濁す。


「聞いてたっていうか、……聞こえたっていうか。」

「……」


 鈴原がだんまりとして俯いて、沈黙が続くと、俺の花火も静かに消えていった。


「……好きな人、居るんだ。」


 俺が問いかけると、隣の鈴原の肩が、大きく揺れた。


 俺が鈴原を見つめると、鈴原も俯けていた顔を上げ、黒目がちな瞳に俺を映した。


 消えかかった外灯の光が、チカチカと点滅し始めたかと思うと、やがてそれは消えてしまい、お互いの顔が暗闇に埋もれて、鈴原の表情は見えなくなった。


「うん、……いる。好きな人……。」


 そんな中聞こえた、鈴原の誰かを愛おしむような優しい声に、俺の胸の奥は真っ黒な感情に支配された。


 気を紛らわすように、2本目の花火に火を点けると、俺たちの間は優しいオレンジ色に包まれた。


「へえ、……どんなやつ?」


 俺は前のめりになって膝に肘を置き、ぶっきらぼうに言う。


「……うん、……いつもわたしのこと、助けてくれる人。」


 俺は、外灯が消えていてよかったと思った。


 おそらく今はすごく情けない表情をしているだろうし、好きな奴を想う鈴原の顔は見たくなかった。
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