ことり公園。
***


「もう、……小鳥遊くんてば笑いすぎ。」


 映画館を出たところにあるベンチに腰掛け、くすくすと笑う俺の肩を、隣に座る鈴原が恥ずかしそうに顔を赤らめながら叩いた。


 目の前にはチケットの販売機と、上映中の映画の大きなポスターがいくつも貼られている。


 柱に取り付けられたモニターからは、俺たちがさっき見た映画の予告が、繰り返し何度も流れていた。


 映画には、笑えるシーンよりも、感動的な所の方が多かったといえる。


 俺が笑っているのは、映画のことではない。


「だって、鈴原が……。」


 背を向けて見ないようにしていた鈴原の顔を見ると、やっと引っ込みかけていた笑いを、またぶり返してしまった。


「……もう。」


 鈴原がフグのように頬をふくらませる。


 映画のラストは、感動的なシーンでおわった。


 その時ふと、隣で鼻を啜る音が聞こえて俺は隣に目を向けた。


 ……鈴原は、ありえないほどに号泣していた。


「感動的だったじゃない。あそこで泣かない小鳥遊くんの心が冷たいんだよ。」


 鈴原が下唇を突き出しながら、不貞腐れたように言う。


「映画で泣きそうになってた気持ちなんかあれ見たら吹っ飛ぶよ。」

「……そんなに?」


こくんと頷くと、鈴原はまだ納得のいっていない様子だった。 
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