ことり公園。
 その様子を暖かく見守り、お母さんとお父さんは気を遣ったように病室から出ていった。


 小鳥遊くんは、傍らに置いてあった丸椅子をわたしのベッドの横まで引っ張り、そこに腰掛ける。


 そして、慣れたようにわたしの左手を取って、握った。


 決して心地悪さは感じず、わたしもそれを振り払ったりはしない。


 最初は不安げな表情を浮かべていた彼も、わたしにその意思がないのがわかると、表情を和らげた。


 小鳥遊くんの瞳を見つめると、彼も同じようにわたしの瞳を見つめた。


 その瞳はとても優しく、……とても寂しげだった。


 その後もわたしたちは、ただ見つめあっていた。


 言葉もなく、ただそれだけ。


 左手から伝わる彼の温かな感触と、寂しげに揺れる、わたしを見る瞳。


 ……どうしてだろう、彼を見ていると落ち着かない。


 わたしの中にそんな疑問を残しながら、小鳥遊くんはわたしの手を離した。


「おばさん達も、……話したいこと、いっぱいあるだろうから……。」


 そうして立ち上がり、背中を向けたかと思うと、顔だけ振り返り、小鳥遊くんは鼻の下を人差し指で擦りながら言った。


「あのさ、……絶対また、来るから。」


 その言葉に、ほっとしている自分が居たのがわかった。


 寂しがっていたわたしのひとりぼっちの心が、ほんの少し、救われた気がした。
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