ことり公園。
 鈴原はそんな俺を置いてきぼりにして続けた。


「ずっと、……好きだったの。……だから、嘘みたい……。」


 彼女の言う『ずっと』は、一体いつのことなんだろう。


 俺は未だ鈴原の言葉を受け入れられずに、呆然と彼女を見つめながら立ち上がる。


 ブランコが俺の後ろでゆらゆらと揺れた。


 鈴原はそんな俺をきょとんと見つめながら立ち上がり、首を傾げた。


「絵鳩……。絵鳩こうたのことは?」


 俺が言うと、鈴原は遠くを見つめ、前に来た時と同じように、憂いを帯びた笑みを見せた。


「……こうちゃんのことは、確かに特別だけど、それは、幼なじみだからで。……それにわたし、ひどいことしちゃったから、……嫌われちゃってるの。」


 俺は鈴原のそんな顔を見て、これ以上絵鳩の話を続ける気にならなかった。


 てっきりふられると思っていた俺は、まだ少し動揺したままだ。


 沈黙の中鈴原を凝視していると、目が合った彼女は照れ臭そうにはにかんだ。


 その笑顔で、一気に現実に引き戻されていく感じがした。


 ……漠然と、ほんとうなんだとわかった瞬間、とても彼女が愛おしくなった。


「……帰ろう。」


 ふと陽が落ちかけた空を見上げ、公園を出る。


 さりげなく繋いだ左手は、どちらのものかわからない熱で、火が出そうなくらいに熱くなっていた。
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