おやすみを言う前に
「酒飲まれへんの?」
「私まだ未成年なので。」
「でも皆飲んどるやろ。飲めへんのやったら無理して飲まんでええけど、飲みたいなーとか思わん?」
「お酒は二十歳になってからって決めてるんです。」
「誕生日いつ?」
「二月です。」
「まだ結構あるやん。それまでに飲み会なんぼもあるで。」
「待った分だけ楽しみが増えそうだから、大丈夫です。」
当たり前の事と言えばそうなのだけれど、周りに流されずにきちんと飲酒を断る彼女は今まで俺の身近にはいないタイプだった。
大学生なんて程々に緩くて適当で、それは飲酒に限らず喫煙とか恋愛とかにも当てはまって。そんなだらだらとした空気にまるっきり染まっていた俺。
麻衣子が輝いて見えたのは、容姿のせいだけではなかった。