おやすみを言う前に
「俺に迷惑かけたくないー思ってんやろ。」
「……うん。」
拓馬は何でもお見通しだ。私を一番よくわかっているのは間違いなく彼だ。
「せやったら死ぬ気で頑張りいや。教師一本に絞って、何が何でも受かったらええねん。受かったら俺に頼らんくても済むやろ?」
額を離して力強く言う彼に、もやもやしていた心が晴れた。
そうだ、私は逃げていたのかもしれない。絶対に教師に受かるって自信があれば滑り止めなんていらないはず。
教師しかやりたくない。だから一直線に努力し通してみせる。
「ありがとう!就活辞めて教師一本で行く!」
拓馬の言葉が嬉しかった。背中を押された。出来るだけ負担にはなりたくないけれど、負担になっても構わないと思ってくれていることがたまらなく嬉しい。
「万が一失敗しても養ったるからどーんとぶつかっていけやー。」
最後にぎゅっと抱きしめられた。本当に幸せで大好きだと再確認した。
この時、このままずっと拓馬の隣にいる未来がすぐ傍までやってきた気がしたんだ。