おやすみを言う前に
飲み会の帰り際に連絡先を聞いたら教えてくれて、大阪に帰ってからは麻衣子とのやりとりが楽しみになっていた。
北陸出身であること、五人兄弟の真ん中であること、教育学部で小学校教諭を目指していること、彼氏や好きな人はいないこと。麻衣子の情報が増える度に近付いている嬉しさと会えないもどかしさが募った。
ただメッセージを送り合うという中学生みたいな行為が、逆に麻衣子を好きという気持ちを高めたのだと思う。
モテない訳ではなかったし、恋愛もそれなりにしてきた。なんとなくいいなと思ったら即口説いてみて付き合えれば万々歳、脈なしなら次を探す。浮気したことこそなけれど、常に流された恋愛しかして来なかった。
「二十六にもなって初恋みたいなことしとんなあ、俺。」
思わず一人の部屋で独り言を呟いてしまうくらい、麻衣子からのメッセージひとつひとつに胸を躍らせていたのだ。
しかもそれが恥ずかしい以上に嬉しいことが、自分でも意外だった。