おやすみを言う前に

「あの、その……。」

「俺な、麻衣子ちゃんのこと結構好みやねん。最初会ったときからええなーって思ってん。」

「……。」


彼女が今どんな表情をしているのか。わからないままに口が勝手に動く。


「俺と付き合わん?」


考えるより先に言葉が出ていた。

ここ数年は流れでなんとなくとか、酔った勢いで一夜を共にしてしまってとか、そんな始まりでしか恋人をつくっていなかった。


「麻衣子ちゃんのこと好きやねん。」


こんな風にきちんと告白するのは久しぶりだ。

しかし、言ってすぐに後悔した。たった一度しか会っていない、よくわからない男から告白されても迷惑なだけだろう。
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