おやすみを言う前に
案の定彼女は無言のままだった。
「聞こえとる?」
「あ、はい。すみません、ちょっとびっくりしちゃって。」
数分間沈黙が続いて耐えられなくなった俺からまた声をかける。
「まあ、そらびっくりするわなあ。」
「はい……。」
「俺のこともよう知らんやろし、そんなんで返事くれー言うても無理やんな。」
「すみません。」
麻衣子の声が本当に申し訳なさそうに聞こえて、そんな声を出させてしまった己の早急さを反省する。
けれどそんな素直さや純粋さにまた心惹かれる自分もいる。