おやすみを言う前に
「うわー、ぐちゃぐちゃや。」
「でも味はおいしいよ?」
出来上がった夕食を二人で向かい合って食べる。
ロールキャベツは巻き方が悪かったのか煮込み過ぎたのか、原形をとどめていない程に崩れていた。しかし、普段あまり料理をしない拓馬の精一杯が嬉しい。
「麻衣子が作った方が美味いやん。」
「私の方が料理してるもん。」
「むかつくわー。せやけど、まあその通りやな。」
「ふふっ。」
ムキになるところが子どもみたいだ。
六歳差を感じる時と感じない時。大人の余裕と子どもの無邪気さをどちらも持っている拓馬はいくらでも女の子を選べそうなものなのに、なぜ私なのだろうと不思議だけれど。
「あ、笑ったな、俺の努力を。」
「笑ってないって。おいしいよ。」
「嘘やー。笑った罰として明日はハンバーグ作ってもらうで。」
「また挽肉になっちゃうよ?」
「そんなの気にせん。俺は麻衣子のハンバーグが食べたい。」
「あ、明日バイト。」
「じゃあ明後日な。」
ストレートな要求に顔がほころぶ。
愛されてるという自信はある、拓馬の言葉はいつだって真っ直ぐでシンプルだ。言葉だけではなく態度でも私を想ってくれていることが伝わる。
だからこそ、余計にわからないのだ。