おやすみを言う前に
麻衣子はとても驚愕の表情を見せる。
よう驚く子やなあ。こっちも段取りした甲斐があるわ。
「勝手に決めてしもうたけど、大丈夫やった?イタリアンやけど。」
「イタリアン好きです、大丈夫です。」
俺以上にがちがちに緊張しているのがあからさまだから、逆にこっちの緊張感がほぐれる。
「行こか。」
「はい。」
カツカツとヒールを鳴らして麻衣子は横を歩いた。せっかちだと言われがちな俺は意識してペースを合わせる。
今日の彼女は白いワンピースに白いサンダルを履いている。前回はもう少しカジュアルな格好をしていた気がするが、こんな格好もするらしい。どちらも可愛い。
「先輩はやっぱり大人ですね。」
「そう?」
「すごいスマートで、なんていうか、すごいです。」
「そんなことあらへんよ。そりゃあ年食っとる分大人ではあるやろうけど、俺も麻衣子ちゃんくらいの時はガキやったで。」
「想像つかないですね。」
ふわっとした会話しかしていないが、とりあえず沈黙にはならないまま予約した店に到着した。