おやすみを言う前に

「奢ってもらう訳にはいかないです。」

「ええって。そんな高くないし、年下の女の子に出させられん。」

「でも、せめて半分でも。」

「奢ってやったからって付き合って、なんて言わんから。男のプライドだと思って奢られといてや。」

「……すみません、ごちそうさまです。」


気まずそうな麻衣子。

今まで俺が付き合ってきた女の子は奢られるのが当然とか、奢ってもらったらラッキーとか、そんなタイプで。それはそれでちょっとムカつくこともあるけれど、楽でもあった。

壁を作るタイプなのかもしれん。よう知らん男に借りは作りたくないーみたいな。せやったらどうしよ。


「まだ時間平気やろ?ちょっと歩こか。」

「…はい。」


これからどう攻めたらいいかなあ、と思慮を巡らせる。

考えてみれば、麻衣子が自分も半分払うと言い出したのは店を出てからだ。支払いの場では黙ってありがとうございますと言っていた。

俺に恥をかかせないように、男を立てられる子なのだ、彼女は。


麻衣子の新しいいいところを見つけて、また好きになるけれど。
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