おやすみを言う前に
「どうした?」
「……大丈夫。」
「そんな顔して大丈夫やないやろ。なんかあったんか?言うてみ。」
「……。」
優しくされると切なくなるのは何故だろう。泣きそうになる。
「ちょっと、気持ち悪くなっちゃっただけ。先に寝るね。」
「ほんまに?」
「うん。」
「せやったらええけど、まだ起きとるから具合悪なったら言いや。」
「うん、ありがとう。おやすみ。」
逃げるように自室に籠った。嘘をついてしまった。
大人の余裕を見せられるときゅんとすることもあるけれど、ずるく感じてしまうこともある。私が子どもだってことを思い知らされてしまう。
大人な拓馬には私では物足りないのかもしれない。もっと大人の女性が相応しいのかも。
今日もひとりで眠る。
同じ家にいるのに、拓馬が遠い。