おやすみを言う前に

「今日のレストランやってネットで調べまくっただけやし、ほんまはあんなとこ行ったことないねん。いつもは大阪のきったない飲み屋で呑んどるだけや。」


俺が似合わんことするから、麻衣子は俺をめっちゃ大人やー思って無理させてしもうたんやな。格好つけたりせんでよかった。


「スカンピやのアンティパストミストやの、そういうお洒落用語やって一つも知らん。カッコつけたくて予習してきただけや。」

「そうなんですか……?」

「そやねん。余裕ぶってたかもしらんけど、好きな女の子とデートやもん、浮かれとるし緊張もしとる。」


彼女のことを、壁を作っているのではないか、など勘違いにも程がある。

こっちが見栄張って本当を隠しているのに、相手が心を開いてくれるはずがないのだ。
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