おやすみを言う前に
「責めてんちゃうで。麻衣子のことやからまた俺に負担かけたらあかんとか思っとんのやろうけど、言うてくれへん方が嫌や。」
「うん。」
「とりあえず今日はうちに泊まりぃ。 そんな危ないとこに帰されへんわ。」
「うん。」
泣きじゃくりながら頷くだけの私を、拓馬はそっと抱きしめてくれた。
拓馬の腕の中はいつも温かくて、悲しいことがすぅっと薄れていく。魔法のようだ。
「もう、泣き虫やねんから。」
「うん。」
頭をぽんぽんと撫でられて、私も拓馬の背中に腕を回してぎゅっと抱きついた。
私のとは異なる逞しい身体が頼もしく感じられる。どうしてすぐに頼れなかったのだろうと、要領の悪い自分が恥ずかしい。