おやすみを言う前に

晴れて付き合うことになったけれど、俺は大阪、麻衣子は東京という遠距離恋愛からスタートすることになった。

転勤が終わる九月末まで一ヶ月ちょっと。一度か二度は会いに行けるだろうか、もし無理でも一ヶ月くらいやし、一ヶ月我慢したらいつでも会えるようになるからいいか。

なんて、呑気に構えていた俺に、最悪のニュースが舞い込んできたのだ。


「もしもし。」

「もしもし、今平気やった?」

「うん。」


二日に一度のペースで電話するのが日課となって約二週間。声を聴くと会いたくてたまらなくなる。


「今日は麻衣子にお知らせがあんねん。」

「お知らせ?何ですか?」

「敬語。」

「あ。」


ルールというか、付き合ってすぐにお願いしたことがある。こっちから言わないと、彼女はいつまでも変わらなさそうに思えたから。
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