おやすみを言う前に
「来週の土日にそっち行くわ。」
「ほんと?」
「どっか行きたいとこ考えといて。」
「うん!」
ころっと嬉しそうな声に変わる。
会いたい。今まで自分は淡白なタイプだと認識していたが、そうではなかったようだ。こんなに焦がれる気持ちが俺の中に存在していたなんて。
「だから麻衣子んち泊めて。」
「ええっ。」
「嫌なん?」
「嫌、ではないけど、だって。」
この調子だから、遠距離でもやっていけるだろう。むしろ奥手な麻衣子を慣れさせるには、このくらいがちょうどいいのかもしれない。
少なくとも俺は、会えないことが恋心を冷めさせる理由にはならなさそうだ。