おやすみを言う前に

「来週の土日にそっち行くわ。」

「ほんと?」

「どっか行きたいとこ考えといて。」

「うん!」


ころっと嬉しそうな声に変わる。

会いたい。今まで自分は淡白なタイプだと認識していたが、そうではなかったようだ。こんなに焦がれる気持ちが俺の中に存在していたなんて。


「だから麻衣子んち泊めて。」

「ええっ。」

「嫌なん?」

「嫌、ではないけど、だって。」


この調子だから、遠距離でもやっていけるだろう。むしろ奥手な麻衣子を慣れさせるには、このくらいがちょうどいいのかもしれない。

少なくとも俺は、会えないことが恋心を冷めさせる理由にはならなさそうだ。
< 59 / 89 >

この作品をシェア

pagetop