おやすみを言う前に
私は大学から徒歩十分のアパートで一人暮らしをしている。
大学のすぐ近くなので周りには学生がたくさん住んでいて、私のアパートにも数人同じ大学の学生がいる。隣人もその一人だ。
この隣人に、告白された。
私もだけれど、今は防犯やセールス対策として表札に名前を出さない人が多い。だから名前も学部も学年も知らない。ただ朝家を出る時間がかぶったり、学内でたまたま見かけたことがあるから、同じ学生なんだと判断しただけだ。
実際、私とその隣人はせいぜい互いの家の前で会った時に会釈をするくらいしか関わりがない。
それなのに、拓馬と付き合い始めて一年が過ぎた九月のある夜。インターホンが鳴った。
ドアを開けると隣人がいた。
年齢はたぶん年上で、ぼさぼさに伸びた長い髪で目はほとんど見えない。いつも猫背で俯いている人。
そんな隣人がなんだろう、と思ったら。
「ああああの、僕、小高さんのこと好きなんです。」