おやすみを言う前に
名前を知られていることにも驚いたが、好きだと言われたことに目が点になった。
「あの、ごめんなさい。」
「そそそそうですよね、小高さん彼氏いますもんね。ですよね。ですよね。」
「……。」
挙動不審な話し方に言いようのない不気味さを覚えた私は、無言でドアを閉めてしまった。鍵を掛けて覗き窓から見ていると、しばらく立ち尽くした後、隣人は部屋に帰って行った。
拓馬を連れてきたことも何度もあるし送ってもらったこともあるから、隣人が拓馬の存在を知っていたとしてもなんら不思議ではない。
なんだろう、私の勘が危険信号を告げた。
しかし元々関わりがないのだし、隣に住んでいるのが少々気掛かりだがまあ大丈夫だろう。そう安易に構えたのが間違いだった。